細菌性髄膜炎は常に時間との闘いである.一刻も早く対応しないと致命的になることもある.細菌性髄膜炎の臨床像の振り返りから始まり,治療の流れまで一気にまとめていこう.
まとめノート
解説
臨床像から振り返ろう.古典的には「発熱」「項部硬直(頭痛)」「意識障害」であるが,3徴が揃うのは30%程度とされている.足並みを揃えてくることは少ないと覚えておこう.患者の多くは意識障害+敗血症でやってきて,問診すると(あるいは身体所見で)頭痛を認める・・・という感覚だ.なので,鉄則にも記載したが細菌性髄膜炎といえば,古典的3徴ではなく,意識障害+qSOFAから疑おう.ちなみに私は無菌性髄膜炎を3例経験したことがあるが,いずれも頭痛があって,精査すると無菌性髄膜炎が鑑別に挙がった,と言うような印象である.常々,頭痛の訴えが強く,その他の症候はそこまで派手でない印象だ.経験に基づくのでエビデンスレベルは低いが,参考にされたい.
身体所見は特異度と感度を意識して検査しよう.まとめノートに記載のある項目のうち,Jolt accentuationは感度が高い(=つまり除外診断に向く).ただ,細菌性髄膜炎の患者は頭痛がひどく,そもそも頭を振ることを嫌がることも多いので,しっかり患者心情をケアしながら検査したい.
身体所見が終わったら,血液培養は取ろう.必ず取ろう.絶対必要な検査である.頭部CTの撮影は頭蓋内圧亢進症状を否定するため・・・と説明されるが,それと同時に脳卒中や外傷の否定も行いたい(意識障害の原則に則る).また起因菌同定のために,尿中抗原も採取しよう.尿中抗原と言えば肺炎球菌とレジオネラ菌であるが,この場合のターゲットは肺炎球菌である.ただし,一つ注意したいのは偽陽性になることがあるということだ.一度陽性になると数週間から数ヶ月は尿中に排泄されるので,既感染か新規感染か見極める必要がある.またワクチン接種後は1週間程度は尿中に排泄されるので,接種が推奨されている高齢者では注意したい.あくまで,多角的に起因菌同定するための補助的な検査と思おう.最後に大事な検査は腰椎穿刺だ.ここでグラム染色,培養,細胞数,グルコース濃度を測定しておこう.
さて,色々書いてきて混乱してきただろう.検査から治療の手順を一気にまとめノートに記載した.Fever work upから初めて,抗菌薬投与まで30分以内が目標である.腰椎穿刺する前に抗菌薬投与しても良いの・・・?と思われるかもしれないが,問題ない.髄液まで抗菌薬が到達するまで時間はかかる.また腰椎穿刺は時間がかかる検査だ.だから早めに抗菌薬投与しても良い.
抗菌薬投与例はCVAで覚える.肺炎球菌とリステリア,ヘルペスをカバー出来るよう投与する.
最後に年齢毎の起因菌を記載した.参考程度に見ておくと良い.
みるすきー
参考文献
「救急外来ただいま診断中!」