救急医学2-21.腹痛

医学

腹痛は嫌な症候です.なにせ再現性が乏しかったり,鑑別疾患が多岐にわたるし,身体診察で自信を持って責任臓器が特定できない・・・なんてことも.まずはどれくらい鑑別が挙げられるか,からはじめてみましょうか.疑わなければ診断できない!鉄則でしたね.

まとめノート

解説

私が指導医に腹痛について尋ねたときに,最初に言われた言葉が「鑑別を50個挙げろ.話はそれからだ」でした.必死に50個挙げたのを覚えています(実際は20個くらいで力尽きました).皆さんもまとめノートを見ないで,鑑別疾患を書き出してみましょう.どれくらい書き出せましたか?どれくらい責任臓器を思い浮かべられましたか?意外と見落としている疾患や臓器があったのではないでしょうか.まずは鑑別を挙げる.疑わなければ診断できない.このことを肝に銘じましょう.

そして,この鑑別の中から頻度の高いものを絞り込んでいきます.腸管感染症,急性虫垂炎,腸閉塞,腹膜炎,憩室炎,尿管結石,胆石症,消化性潰瘍,子宮・卵巣腫瘍,子宮・卵巣の炎症,妊娠関連です.ここまで考えられれば上出来です.

これら疾患を念頭に置きながら問診,身体診察をしていきます.
疼痛の項目で紹介したOPQRSTAは聴くとして,関連症状が重要です.神経症状を伴っていれば,大動脈解離を,発熱があれば敗血症を背景に考えて絞扼性腸閉塞,消化管穿孔(特に下部),急性胆管炎,腎盂腎炎は考えたいところ.口渇,多飲,多尿をみたらインスリン関連を疑いましょう.DKAですね!月経異常があれば妊娠関連や女性器の疾患の可能性が高くなります.

Vital Signでみるべきは意識レベル,呼吸数,血圧ですね.ショックの早期認知はしたいところ(ちなみにショックの早期認知で使う「灌流の窓」は覚えていますか?・・・脳,腎,皮膚でしたね).血圧は普段の血圧と比較しましょう.血圧低下=ショックではありませんよ.ここまで勉強している人なら大丈夫なはず.定義はちゃんと言えるようにしましょう.「循環障害による組織における酸素需要と酸素供給のバランスが崩れることである」です.出血性ショックを早期に捉えたいなら,血圧とHbではなくShock Index(心拍数/収縮期血圧で算出)をみましょう.

身体診察で「板状硬」という言葉が一人歩きしていますが,これは上部消化管穿孔の所見です.下部消化管穿孔の場合は押すと痛がります.反跳痛もまた有名な所見ですが,腹部が硬い反跳痛は消化管穿孔を考えます.腹部が柔らかい反跳痛は婦人科系疾患を考えます.

最後に腹部超音波検査で分かる所見をノートにまとめておいたので,ご参照ください.
CTアクセスが良い日本では,すぐCTとなりがちかもしれませんが,超音波検査も身体所見の延長線と考えてしっかりマスターしましょう.


みるすきー

参考文献
「救急外来ただいま診断中!」

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