初期研修をドロップアウトした経緯

日々の記録

ドロップアウトとは

私は初期研修をドロップアウトしました.「ドロップアウト」ってなに?と非医療者の方は思うでしょう.医学部を卒業して,医師国家試験を合格すると,めでたく「初期研修医」になれます.初期研修は法律で2年間行うことが定められており,決められた時間研修しなければなりません.しかし,途中で産休や病気で研修を中断する人が少数存在します.その(特に好ましくない理由で)中断したことをドロップアウトと言います.

なぜドロップアウトしたのか

私はなぜドロップアウトしたかというと,複数理由が存在します.

1.たすき先が希望病院ではなかった
当院はたすき掛け制度の研修を採用しています.1年目の研修態度や社会人としてのマナーを点数化して,2年目の希望病院を決めるという方式をとっています.私は,他の人と同様に研修しているつもりでしたが,希望順位の低い病院に唯一人マッチし,自分の能力に自信を持てなくなってしまいました.
後に,研修担当の先生と話したときは,たまたま他の人と希望が重なって不運にも私の希望が通らなかったそうです.しかし,当時の私はネガティブ思考に陥っており,正常な判断は出来なくなっていました.

2.指導医からパワハラを受けた
当時,研修していた科の指導医は厳しい指導医で,自ら「昭和世代の生き残り」を自称するほどの厳しい先生でした.その先生に「役立たず」「使い物にならない」などと言葉を浴びせられて,すっかり参ってしまいました.よくよく考えれば,その先生の言葉を真に受ける必要はなかったのですが,当時の私にはその余裕はありませんでした.

3.周りに相談できる友人・同期がいなかった
当時は朝6時出勤,夜8〜9時退勤の生活で,他の科をローテしている研修医と顔を合わせる機会がありませんでした.本来なら愚痴を言い合える中の友人もおらず,ますますストレスをため込んでしまう状況でした.

ついにドロップアウト・・・

不眠,食欲減衰,中途覚醒・・・.私はある日当時付き合っていた彼女に「死にたい.車に轢かれれば楽になる」とこぼしました.彼女は私と同じ医師だったので,すぐに異変に気づいてくれて産業医に行くよう勧めてくれました.翌日,産業医/精神科の先生と面談した私は,はじめて「抑うつ状態」と診断されました.その日から休職し,職場から離れることになりました.帰り道,もう職場に行かなくて良いんだという安心感と,レールから外れた不安感で,涙ぐみながら帰ったのを覚えています.この先どうなるのか,分からないまま休養の日々が始まりました.

休養の日々

最初の2週間は緊張で不眠を繰り返していました.私の精神科医曰く,休養し始めて最初の頃は緊張感が抜けないそうです.だんだん,休みに慣れてきて,ようやくネットサーフィンやAmazon Primeでドラマを見れるようになりました.それでも,一日中倦怠感が抜けずにしんどい日々が続きました.今では,普通の人と同じくらいには生活できる水準まで戻りました.これからも療養生活は続く予定です.

これから研修医になる人へ

初期研修は大事な期間です.何でも学べる,いわば黄金期間です.しかし,無理がたたると私のように研修中断し,休養せざるを得なくなります.鬱病の休養期間の中央値をご存じですか?6ヶ月です.これは中央値です.平均値ではありません.鬱病になると,1年以上休養することも珍しくありません.皆さんには同じ思いをしてもらいたくありません.楽しい研修期間を過ごすためにも,メリハリと休養を意識して充実した研修を過ごしてください.


みるすきー

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