救急医学2-15.DVT・PE

医学

長期臥床していた患者さんが歩き始めて呼吸困難と胸痛を訴える・・・.これが典型的な肺塞栓症の臨床像です.しかし,臨床では多彩な症状を呈し,特異的な所見がないことを頭に置いておきましょう.

まとめノート

解説

突然発症の胸痛なら良いですが,それ以外の症候が問題です.説明がつかない呼吸困難,低酸素,頻脈を見たら積極的に肺塞栓症を鑑別に挙げましょう.また失神,喀血,下肢腫脹も肺塞栓症を考える症候です.数字で説明すると,65%は胸痛もしくは喀血で受診します.呼吸困難のみは22%です!(ジェネラリストのための内科診断リファレンスより).意外と呼吸困難のみも多いのが印象的ですね.こういうときは胸部X線を撮影してみましょう.胸部X線で肺野が正常であれば,積極的に肺塞栓症を考える所見です.ちなみに肺塞栓症に特異的な胸部X線所見としては,肺血管陰影途絶・減弱,末梢を底辺とした楔状浸潤影です.胸水も比較的よく見られる所見です.
さて心電図所見はどうでしょうか?SⅠQⅢTⅢが有名な所見ですが,これは右心が負荷されている所見という意味です.初心者ではまず見抜くのが難しいでしょう.過去に国家試験でも心電図が添付されている問題がありましたが,私は難しくて見抜けなかったです.心電図では右軸偏位(特異度97%)や右脚ブロック(特異度95%)の新規の出現があれば積極的に疑いましょう.
さて,みんな大好きDダイマーはどうでしょうか?実はあまり有用ではありません.Dダイマー単独で肺塞栓症と診断するのはやめましょう(肺塞栓症の既往歴や大動脈解離,心筋梗塞の既往でも高くなる).
一番有用な検査は造影CT検査でしょう.下肢まで加えて検査すれば,見落としが少なくなります.
まずは国家試験的な典型例を固定概念から排除しましょう.呼吸数に注目して,診察しましょう.
私が担当したある症例では,患者さんは歩いて来院しましたし,軽度な呼吸困難のみ,やや微熱があるというものでした,詳細な問診で,そういえば足も痛い気がする・・・という訴えがあり,下肢エコーを当てて血栓を発見.造影CTを行ったところ,肺動脈近位に大きな血栓を見つけました.そのときは腰を抜かすほど驚きましたね.もっと重篤感があると思っていましたから・・・.
このように臨床像は多彩で,掴み所がないのがDVT・PEです.しっかり拾い上げられるよう,非典型例を学んでおきましょう!


みるすきー

参考文献
「救急外来ただいま診断中!」
「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」

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