入院患者さんのルーティンの血液検査.肝臓に異常はないはずなのにAST,ALTが上がっている.なんで・・・?こういう検査結果は良くあることです.さて,そういうときに何を考えましょうか?アセスメントが試されていますよ!
まとめノート
解説
まずはAST・ALT優位なのか,γーGTP・ALP・T-Bil優位なのかで分けて考えます.
今回は肝障害を考えたいので,AST,ALT優位であるパターンで話を進めます.大体多いのが薬剤性ですね.薬剤開始後,5〜90日後で肝酵素上昇を認めることが多いです.なので,入院時血液検査と比較して,新規開始した薬剤の時期と照らし合わせて,薬剤を絞り込みましょう.その際,電子カルテのDI参照機能や薬剤師さんに相談するのも重要ですし,「今日の治療薬」などの書籍を参照することも大事です.もし被疑薬に代替可能なものがあれば,代替しましょう.最近は高齢化社会で内服薬をたくさん飲んでいる患者さんは多いです(ポリファーマシー).薬剤整理も医師として重要な仕事です.是非,薬剤師さんと協働しながら整理していきましょう.
次いで,考えるのがうっ血肝,虚血肝ですね.特にうっ血による肝障害は鑑別の上位に挙がります.なぜかというと,入院中は患者さんの活動性が低下するからです.便秘と同じ話ですね.これは入院中も活動性を落とさないように,高齢患者さんが入院したらリハビリテーション科にコンサルテーションしましょう.
ここまでの話は,入院中によくある話です.AST,ALTがだらだら2桁台で上昇していて,なんとなく気味が悪い・・・みたいなイメージです.もし,トランスアミナーゼが4桁超えてきたら少し頭を切り替えましょう.
トランスアミナーゼが4桁超えたら,ショック肝,ウイルス性肝炎,薬剤性肝炎を考える.
LDH優位ならショック肝,ALT/LDH比が1.5倍以上ならばウイルス性肝炎を考える.
(ジェネラリストのための内科診断リファレンスより)
ALT/LDH比が1.5倍以上ならば感度94%,特異度84%で急性ウイルス性肝炎であると報告されている(ジェネラリストのための内科診断リファレンスより).なので,血液検査でウイルス検査を提出しましょう.
治療は安静,食事,輸液です.対症療法ですね.昔,私もE型肝炎患者さんを見たことがありましたが,この対症療法だけで軽快して退院していきました.
軽度の肝機能異常なんて・・・患者さん元気だし・・・とか思わず,ここまでアセスメントしてカルテに書くだけで出来レジです.地道ですが訓練だと思って頑張りましょう.
みるすきー
参考文献
「内科レジデントの鉄則」
「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」