オープニングトーク
はい,みなさんこんばんは.
時刻は午後10時になりました.
みなさん,1週間お疲れ様でした.
この時間は私みるすきーがお送りする「ゆるっと鬱ラジオ」の時間です.
みるすきーはフィンランド語で嵐を意味する言葉です.
救急医療に嵐を巻き起こす男として将来が期待されている逸材です.
どうぞよろしくお願いします.
さて,GWも後半戦ですね.皆さんどこかに遊びに行かれましたか?
私はずっと育児三昧でした.まだ子供が生まれて1ヶ月経ってなくて,授乳やらおむつ替えやら寝かしつけで大変でした.正直言うと,仕事より辛い笑.育児って大変ですね.やってみて分かりました.お父さんお母さんありがとう!本当に感謝ですね.かつて私も可愛い時期があったようですが,今はおっさん・・・というか森のくまさんに例えられるくらい身体がでかくなりました.太っただけなんですけど.どうにかして痩せたいので,良いダイエットがあれば教えてください.
さて,今日は真面目な話をします.いや,いつも真面目なのがこのラジオなんですけど,今日は救急医療について真面目に考えます.
一応,このラジオが初めての人がいると思うのでルール的な物を説明すると,このスペースは「ラジオ」と銘打っているので,基本的には私だけがべらべら喋ります.で,もしリアクションがあればリプを飛ばしてください.それにお答えします.なので,スピーカー権限は私だけだと思ってください.混乱しないようにするためです.よろしくお願いします.
救急医の育成は喫緊の課題
さて,本題に入ります.救急医の育成について,喫緊の課題と考えます.
尊敬する大友康裕先生は医科歯科のPV内で医療偏在の問題を解決するのは救急医だとお話ししていました.広い領域を見れる医師の存在はますます今後の社会に必要とされる.初療から緊急度・重症度を把握して適切な医療を提供できる医師は間違いなく社会貢献になる,と.
しかし,救急医のなり手が少ないのも現状です.
私の同期は36人いるんですけど,そのうち救急医になったのは2人でした.多いか少ないかは判断がつかないですが,もともとはもっと救急医志望者はいたんです.なぜ研修同期は救急医を志さなくなったのでしょうか.理由を聞いてみると,
→きつい:プライベートを重視したい,QOL,夜間の呼び出しがきつい
→進んだ先:精神科,メジャー内科(腎臓内科など)
私の病院では3年目から自由診療に行くという人は皆無だったが,全国的なトレンドになりつつある様子ですね.あまり良い状況とは言えないと思います(自由診療が悪と言っているわけではない).
医療偏在,医師の偏在はいろんな年代の先生を巻き込んで考えた方が良い問題ではないかと思う.
救急医を取り巻く問題
救急医を取り巻く問題ですが,次の5つを挙げました.
1.働き方改革
これはあまり問題にならないでしょう.なぜなら救急はチーム制を採用している病院が多く,またシフト制ですからね.ただ実際に2024年がきて制度が運用されないと不透明な部分はあります.
ただなぜこれを問題としてあげたかというと,プライベートを重視したいという研修医の要望や夜間の呼び出しがきついという問題意識に対して,もっとシフト制/チーム制の素晴らしさを宣伝していくべきではないか,と思ったからです.そうすれば,上記のきついと言った救急のイメージが和らぐと思うんですよね.
2.ダブルボードを取得するか問題
救急専門医だけは片手落ちっていう先生がいますけど,ダブルボード取得するまでの道のりの長さを考えると大変だと思います.もうちょっとなんとかなりません?専門医機構さん.まぁこれは研修医がぎゃあぎゃあ騒いだところでどうしようもない問題ですね.改善されることを切に願います.
ちなみに医科歯科ERではACSを目指す場合,最初の1年は大学病院で救急医として働きますが,これは外科専門医の1年分としてカウントされるようになっています.結構融通が利いて良い制度だと思います.
それで実際,専門性を高めるために,救急医が他の基本領域を学ぶことは賛成だし,そうあるべきだと思います.多様で多彩な救急医療を全国展開できればこの上ない強靱なインフラになるはずです.そのためにも,人(医局員や在籍する救急医の人数)が増えないと難しいだろう.
3.他科との連携の難しさ
医科歯科ERは多くのダブルボードを取得している医局員が在籍しているため,積極的に他科の専門領域でも自科で行うシーンが多いです.しかし,これにより他科からの反発を招くことがあり,たびたび他科の指導医からERの悪口や愚痴を聞かされてきました.多様な救急医の育成のためには先ほど述べたとおり他の基本領域の研鑽が必要であるため,他科と衝突することはやむを得ないでしょう.ほどよく折り合っていくためには,救急医が医師偏在,医療偏在の鍵となっていることを広く知ってもらう必要があるのではないでしょうか.また,どこまで他科の専門性に頼るか,それとも自科でやるか,その判断は難しいですね.
4.ロールモデルとなる指導者の減少
先日大友教授が退官されましたが,今後,次の世代,さらに我々若い世代からあのような指導者が出てくるでしょうか.ロールモデルの減少は,救急医を志す人の減少につながる.北総病院では人員が足りていないという話を第13回ACS学会で聞きましたが,外傷外科,ACSのイメージとして名の通っていた病院でも人手不足に悩まされているようです.多くの医局員ないしは救急医が集まってくれるには,魅力あるプログラムと働き方,指導者が必要不可欠と考える.
5.ACSの維持は可能か
救急医は感染症診療から災害医療,大規模事故まで常に社会の最先端のインフラを担ってきました.特に近年外傷患者が減っているとは言え,外傷を見れる外傷外科医の養成は必要であると考えます.救急専門医だけでは外傷患者の対応に限界があるのではないでしょうか.そのためにもより積極的に外傷外科医の養成を行うべきだし,その取得ハードルを下げるべきではないでしょうか.もちろん,医療の質が落ちてしまう懸念もあるが,人が増えないことには好循環は期待されないです.好循環,すなわち「人が増える」→「多彩で多様な働き方が許される(=より良い研鑽環境の創出)」→「ロールモデルの出現」→「人が増える」・・・.
その入り口である人を増やすことには,研修医の教育が重要である.研修医に救急医の魅力を知ってもらうことは間違いなく教育がその一翼を担います.たとえ他科に研修医が進んだとしても,救急医療の現状を知ってもらっているので,良好な関係を築くことができますよね.
また,先ほどのロールモデル/指導者の話に戻りますが,熟練した外傷外科医の指導を受けられる機会も少ないのが日本の現状と考える.将来的にはACSを指導できる施設が各都道府県に一つは出来るくらいにはなってほしいです.そのためには外傷外科医の地位向上が必要だと思います.現状,外科は悪性腫瘍を扱ってなんぼの風潮があるような気がします.
なぜ私は救急医を志したか
原点は学生時代に夜間の救急外来で看護師の助手をするバイトをしていたところまで遡ります.研修医に交じって初療を取らせて貰っていたんです.幸運なことに指導医からの教育も手厚く,その経験から救急医になろうと思いました.何でも見られる,好奇心旺盛,飽き性,そういう人が救急医に向いているのかな・・・.悪性腫瘍に興味ない人も救急医に向いているかも.
私のまとめノートの活動は症候学を中心にまとめていますが,実は救急医を増やすための活動でもあるのです.あんまり信じてもらえなさそう笑.でもプライマリケアって大事だよ.一生使えるからね.その点では救急医は良い仕事だと思います.
セカンドキャリア
救急医のセカンドキャリアは?医局を離れてどう働けるか?この問題もあると思います.往診医,訪問診療なんかは患者さんに需要ありそうです.全身が見られる医師が家に来てくれる安心感は需要あるのではないかと思います.こういうセカンドキャリアを医局や病院で用意していくと安心かもしれない(天下り構造的な).
まとめ
まとめると,救急医の育成は研修医の頃から始まっていると考えるべきで,救急医を増やしダブルボードを標準的にすれば全国で強靱なインフラを敷くことができる.特に外傷外科医の育成は重要な課題と考えており,そのためには外科専門医取得のハードルを下げるべきではないだろうか.それと同時に外傷外科医の地位向上が必要.国民に広く知ってもらう存在になるべき.またセカンドキャリアまで用意し,魅力ある救急医人生を提供できる,後悔させない人生を歩めることを約束できる救急医療,救急教育を実現できると良いのではないだろうか.
人を増やせ!そのための魅力発信を学会から行おう!端的に言うとそうなってしまいます笑.
みるすきー