抗菌薬まとめてみた3.ペニシリン系

医学

さあ,いよいよ具体的な抗菌薬の各論に入っていきます.最初はペニシリン系抗菌薬から行きましょう.1928年にフレンミング博士がペニシリンを発見してから,人類と微生物の途方もない闘いが始まりました.その歴史的観点からも,また実臨床で用いられやすいという観点からも,まずはペニシリン系を学びましょう.

まとめノート

解説

前の記事でもお話しした通り,まずは微生物の系統図を自分で書きましょう.それから,各抗菌薬のスペクトラムを見て学んでください.図の再現が出来るようになることが第一です.

ペニシリンGはスペクトラムがそこそこ広いイメージですが,黄色ブドウ球菌は耐性化しています.大きな特徴は髄膜炎菌に効くこと,クロストリジウム属に効くこと,神経梅毒の治療薬であること(感染症専門家へのコンサルトが望ましい)です.

ペニシリンGが理解できたら,アンピシリン,アモキシシリンを勉強していきます.どちらも同じスペクトラムで,静注か経口投与かの違いです.腸内細菌に有効なのが特徴です.また感染性心内膜炎ではゲンタマイシンと組み合わせて治療することでも使われます.感染性心内膜炎は必ず見る疾患でしょうから,覚えておきましょう.

アンピシリン・アモキシシリンにβラクタマーゼ阻害薬を加えた「アンピシリン・スルバクタム」「アモキシシリン・クラブラン酸」になると,さらにパワーアップします.後ほど出てくるピペラシリン・タゾバクタムでも解説しますが,βラクタマーゼ阻害薬を加える一番のメリットは,横隔膜より下の嫌気性菌に有効になることです.嫌気性菌の関与する腹腔内感染症,誤嚥性肺炎などに使いやすくなります.

先ほど少し触れたピペラシン・タゾバクタムを学んで,ペニシリン系抗菌薬を締めましょう.通称タゾピペなどと言われていますが,緑膿菌に効くことが重要です.「SPACE」の微生物.ご存じですか?セラチア,緑膿菌,アシネトバクター,シトロバクター,エンテロバクターの頭文字を取ったグラム陰性桿菌の連中です.この細菌たちにいかに抗菌薬を効かせられるかが勝負になります.特に緑膿菌は院内感染でよく出てくる細菌です.これに効く抗菌薬を覚えることが重要です.タゾピペは緑膿菌に活性を持った抗菌薬なので,切り札として用いられる印象ですね.


ここまでペニシリン系抗菌薬の特徴を学んできました.研修医にとってはこれだけでも学ぶのに精一杯かもしれません.忘れちゃっても良いです.そしたら,この記事に戻ってきて,何度も繰り返し復習をすればいいですよ.焦らず勉強していきましょう.


みるすきー

参考文献
「抗菌薬の考え方,使い方」
「絶対分かる抗菌薬はじめの一歩」

補足

感染症プラチママニュアルが改訂されるようですね.こちらにリンクを張っておくので,ご活用ください.感染症を学ぶ上で役に立つ本ですよ!

あとは,いつものおすすめの本です.

タイトルとURLをコピーしました