嘔気を訴える患者さんは結構重篤感があります.それに気圧されて,早く投薬しなきゃ!となる気持ちは分かりますが,そもそも治療は鑑別を挙げて原因を突き止めないことには始まりません.「とりあえず,プリンペランいっときますか」という行為はやめましょう.
まとめノート
解説
原因検索はNAVSEAで覚えましょう.覚えると言っても,スマホや手帳に記録しておけば良いですよ.特に見落としちゃいけないのがACS(急性冠症候群).心臓疾患で吐き気?と思うかもしれませんが,意外とあります.随伴症状として冷汗はあるあるですが,嘔気もあるんですよ.ちなみに,嘔気・嘔吐のみのACSは約1〜3%程度です.稀ですね.話は少し逸れますが,ACSの1/4は胸痛以外が主訴で,嘔気,心窩部痛,呼吸困難,心不全,めまい,失神です(ジェネラリストのための内科診断リファレンスより).ここにも嘔気は入ってますね.必ず鑑別に入れるようにしましょう.
話を戻して,嘔気嘔吐患者の薬についてまとめていきます.中枢性というのは嘔吐中枢や化学受容体引金帯(CTZ)に作用し抑制する薬です.末梢性制吐薬は消化管に作用します.プリンペラン大好きな人が多いと思いますが,プリンペランは両方に作用しますね.だから,とりあえず・・・で投与されることが多い印象です.
血液内科をはじめ抗がん剤を扱う診療科に進みたい人は,是非ともイメンド(後発薬はアプレピタント)とデカドロンは覚えましょう.この2剤は抗がん剤の副作用による嘔気を止めるのによく使われます.強力に作用しますね.Non Hodgkin リンパ腫の治療でCHOP療法があったのを覚えていますか?Pのプレドニゾロンはステロイドで抗がん剤としても期待して投与されますが,あれは実は制吐作用も担っているのです.悪性腫瘍はこれからも医療の中心となるでしょうから,制吐薬の使い方を是非とも覚えたいところです.
みるすきー
参考文献
「内科レジデントの鉄則」
「研修医のための内科診療ことはじめ 救急・病棟リファレンス」
「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」