四肢損傷は致命的な損傷に至ることは少ないようですが,見落とされやすい損傷でもあり注意を払って診察したいです.派手な所見が全てではないことを肝に銘じましょう.
まとめノート
解説
まず目を引く損傷といえば,活動性の外出血でしょうか.さすがにこれは止めに行きたいですよね.ということで,まずは圧迫止血です.圧迫でコントロール不良の場合は空気止血帯を用いて止血を図ります.圧迫止血が先か,ターニケット使用が先か議論になることが多いですが,少なくともJATEC第6版では圧迫止血を優先するように記載してあります.おそらく盲目的なターニケット使用を良しとしていないのでしょう.ここは議論されていることでもあり,今後も変わってくる可能性がある話なので,ここではJATECに準拠した記載に留めました.
Primary Surveyで見ておくべき所見は外出血と四肢の腫脹くらいでしょうか.四肢腫脹を認めた場合は腫瘍動脈の損傷を疑いましょう.
Secondary Surveyでは損傷の同定と,末梢循環の評価,神経学的異常の有無を評価しましょう.
画像検査を行う際は1方向ではなく,2方向で.これは忘れられがちなので,しっかり2方向撮影を心に留めておきましょう.
骨折を認める場合は,鎮痛薬投与,徒手的牽引,副子による外固定を行います.
注意すべき合併症を解説していきましょう.
脂肪塞栓症候群は骨折に合併する疾患です.基本的には対症療法になります.男性に多く,大腿骨骨幹部骨折に合併しやすいことを覚えておきましょう.
筋区画症候群(コンパートメント症候群)は筋膜で囲まれた筋区画内圧が上昇して,虚血,神経障害が出現する病態です.まずは激しい疼痛を訴えて,あとから神経症状が出現すること.この時間感覚を頭に入れておいてください.6時間以内に筋膜切開です.
圧挫症候群(クラッシュ症候群)は圧迫により筋が損傷されて横紋筋融解を来たし,急性腎障害を引き起こす疾患です.これも先ほどのコンパートメント症候群と同様嫌な疾患で,最初は意識清明,Vital Sign安定で来るのですが,後々代謝性アシドーシス,高K血症を来すなど時間差攻撃があります.この時間感覚は覚えておきたいところです.
コンパートメント症候群やクラッシュ症候群は地震や電車の脱線,複数の交通外傷など大規模災害で遭遇する疾患です.しっかり対応できるようになりたいです.
みるすきー
参考文献
「JATEC第6版」