医療機関にはかからない?
皆さん誰しもが病気になった経験はお持ちだと思います.例えば風邪.風邪になって,市販の風邪薬に頼った経験はあるのではないでしょうか.しかし,私が医療従事者となり現場を知ることで,市販薬が適切な医療機関受診を妨げているのではないかという考えが生まれました.今回はそのお話をしようと思います.
セルフメディケーションとは
まず,お話をする前に「セルフメディケーション」について解説します.セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)は定義しています。なので,軽度な病気であれば薬局の市販薬などで手当てをしようというわけですね.そして,日本ではセルフメディケーション税制があり,一部の市販薬を購入した際に所得控除が受けられます.嬉しい制度ですね.しかし,この定義には一つ問題がはらんでいると思うのです.
自身の不調をどう判断するか?
これ医療者じゃなければ判断するのが難しいのではないでしょうか?例えば,最近息切れがする.階段を上ると少しの段数で胸がドキドキする・・・.これって年のせい?
分からないですよね.医療知識がないと,もしかしたら不整脈なのかどうか分からないと思います.あるいは頭痛.慢性的に片頭痛があるけど,普段と違う頭痛で悩んでいる.鎮痛薬飲んで仕事に行かなきゃ・・・.これは,私からすると結構危険な判断だと思うのです.こういう風に,非医療者にとって自身の体調を判断することには限界があるのではないかと考えます.
薬局の役割
おそらく,上記のような人はまず薬局に行くのではないでしょうか?私も最近知ったことなのですが,医薬品の販売には,有資格者しかできないようで登録販売者または薬剤師しか販売できない,あるいは説明できないようになっています.このとき,市販薬だけでは難しいと判断されれば,医療機関受診を薦めることもあります.なので,薬局は患者さんと医療機関をつなげる役割を担っているわけです.一方で,市井では市販薬信仰も未だ根強いようで,医療機関にはかたくなにかかりたくないと言う方もいらっしゃいます.これはもう仕方ないですね.医療機関にかからない以上は病気の治療は出来ないので,どうしようもありません.
製薬会社の役割
製薬会社はどうでしょうか?自身の会社の薬が売れないと困りますから,市販薬を買って貰った方が良いですよね.しかし,市販薬だけでは解決できないことも周知しなくてはなりません.一応,市販薬の添付文書には注意書きで「この市販薬で改善しない場合は医師に相談しましょう(意訳)」と書かれていますが,これを読んでいる人が果たしているのでしょうか・・・.もう少し,製薬会社には適切な医療受診勧奨を啓発して貰いたいなと言うのが私の考えです.
結局医療機関は弱い
医療機関は患者さんが来ないと診断と治療が出来ません.なので適切な医療機関受診を薦めるためにも,薬局,薬剤師の地位向上,製薬会社による啓発活動が必要です.
はじめに戻りますが,WHOのセルフメディケーションの定義は明らかに矛盾しています.自身の不調をどうやって判断するか.そこまで言及しなくてはなりませんよね.セルフメディケーションという言葉だけが一人歩きして,中身が浸透していないように思います.これは救急車の適正利用と似た構造だと考えます(この話は後日しましょう).是非,皆さんには身体の不調を感じたら薬局の薬剤師や登録販売者に相談してほしいですし,市販薬だけで解決できない場合もあることを知っていただきたいです.そして,医療機関への受診を躊躇わないでほしいです.より健康増進するためにも必要な考えだと思います.
みるすきー