慢性腎臓病(CKD)は診療科にかかわらず,多くの病棟で見かけることが多い疾患です.一方,CKDは病棟管理に多大な影響を与える因子を複数持っています.今回はそれを一つずつ紐解いていきましょう.
まとめノート
解説
腎機能は増悪していたら,以前の腎機能と比較評価しましょう.これは急性腎障害の項目でもお話ししたことですね.さて,腎機能が悪いと何が困るでしょうか・・・?真っ先に思い浮かべてほしいのは薬剤投与ですね.薬剤は腎排泄のものと肝代謝されるものがあります.例えば,抗菌薬などは多くが腎排泄です.なので,腎機能が悪いとちゃんと薬剤を体外に排泄できないわけですね.そこで,各々の腎機能に合わせて薬剤投与量を調節しなければなりません.薬剤排泄量はeGFRに依存します.その式をノートにお示ししました.本当は各個人の体格に合わせた式も必要ですね.そこで,個別eGFRというものがあります.それに合わせて薬剤投与量を調節しましょう.これは大事なことです.
さて,腎機能と薬剤の関係についてお話ししました.これが病棟管理ではよく問題になるので覚えておきましょう.続いてCKDの重症度評価について解説します.なにやら複雑そうな表が載せられていますね.大丈夫です.覚えるものではありません.ただ,項目は覚えておくと良いでしょう.
話が少し逸れますが,CKDの定義は覚えておきましょう.これは過去に医師国家試験で問われています.
重症度評価が出来たら,それに合わせて治療を進めていきます.治療,というよりは管理でしょうか.AABBCCDDアプローチというものがあります.各項目について説明していきます.
まず貧血(Anemia).ESA産生低下に伴う腎性貧血が進行します.Hbの目標値は11〜12g/dL.ESA製剤を投与しましょう.
次いでアシドーシス.腎臓からのアンモニア産生低下によるHCO₃-の低下を認めます.炭酸水素Naを投与しましょう.
血圧コントロールも重要です.高血圧は腎機能に悪影響を及ぼします.血圧の目標値は130/80mmHgにしましょう.糖尿病性腎症や蛋白尿を認める場合はACE-I/ARBが第1選択薬になります.
4つめは体重管理.基本は減量ですが,ループ利尿薬を使用します.浮腫のコントロールがつかない場合はサイアザイド系を使用しましょう.
腎機能低下に伴い,高P血症,低Ca血症になります.目標はいずれも基準値内で,炭酸Caの投与やリン吸着薬を用います.
脂質異常症も腎機能増悪に関与しますので,LDL-Cholは120mg/dLが望ましいです.食事運動療法,スタチンが第1選択薬になります.フィブラート系は腎機能低下があると使いづらいお薬です.
糖尿病があればコントロールしましょう.HbA1c 6%台が望ましいです.食事運動療法から初めて,薬剤はメトホルミンが第1選択薬です.腎機能低下が進行する場合は,それに合わせて薬剤を変えていきましょう.
ようやく最後が食事ですね.カリウムやタンパク量の制限が必要です.ここで引用させていただくのは恐縮ですが,Dr.孝志郎は「塩の焼き鳥は厳禁ですよ」と患者さんにお話しされるようです.イメージしやすいですね.基本は栄養指導です.K吸着薬を使用する場合もあります.
ここまでがCKDの治療と管理です.大変でしょう?今は糖尿病から糖尿病性腎症になり,そのまま透析に移行する患者さんも少なくありません.多くの病棟,診療科で見る機会が多いので,この機会にしっかり学んでおきましょう!
みるすきー
参考文献
「内科レジデントの鉄則」