救急医学2-28.電解質異常

医学

電解質異常は診療科に限らずどこでもみられるものです.しっかり管理方法は学んでおきたいところ.「ただ薄めればいいんでしょ?」「補充すればいいんでしょ?」ではなく,病態から鑑別までしっかり考えられるようになりたいですね.

まとめノート

解説

・Na異常について
低Na血症の鑑別の仕方から学んでいきましょう.まず血症浸透圧で高張性,等張性,低張性に分けて考えます.このうち,治療が必要なのは低張性低Na血症です.他の高張性,等張性については鑑別疾患をノートに挙げておいたので,それらの治療をしていきましょう.

さて,低張性低Na血症ですが,鑑別は何が考えられるでしょうか?
低張性低Na血症は,常に自由水過剰で生じると肝に銘じましょう.すなわち,水中毒,溶質摂取不足,ADH過剰分泌です.まず,水中毒と溶質摂取不足から除外していきます.
問診(食事歴,飲水歴),尿検査を行いましょう.尿浸透圧が100mOsm/L以下であれば,水中毒と溶質摂取不足が疑わしくなります.
ちなみに,Case Studyの患者さんは飲水量が多そうですね.この方は実際に尿浸透圧が100mOsm/L以下であり,水中毒と診断されました.

低張性低Na血症の鑑別の仕方をまとめました.尿中Na濃度も測定して鑑別を絞り込んでいきましょう.

治療はNaの補正ですが,これが難しいです.補正を急激に行うと橋中心髄鞘崩壊症に陥ります.基本的に経過が不明な患者さんは慢性患者として扱いましょう.急性と慢性で補正速度が異なります.補正速度が速すぎるときは5%ブドウ糖液で補正し直します.1〜6時間毎に経過をフォローしましょう.


・高K血症
Case Studyのような患者さんを前にして,初見で高K血症と分かる人はいるのでしょうか?笑
この方は私が学生時代に研修医の先輩と一緒に診察した患者さんをアレンジさせていただきました.
高K血症は特異的な症状がありません.なので見抜く難易度は格段に高いです.少しでも拾い上げられるようにするために,疑う病歴をノートにまとめておきました.腎機能障害患者,頻呼吸,意識障害,ショック+徐脈,心電図異常.これらの病歴・所見があれば,鑑別に挙げて検査しましょう.

初療の手順をお示ししました.
まずVital Signの確認です.徐脈の有無を見ましょう.次いで心電図評価です.P波の消失がポイントですね.もちろん,テント状T波も重要です.
AKI→高K血症の場合,背景に敗血症や横紋筋融解症が隠れていることがあります.血液ガスは提出しましょう.腎機能障害の確認方法については以前のノートでまとめてあります.そちらをご参照ください.

内服薬の確認もしましょう.漢方薬などはよくやり玉に挙げられやすいかな・・・というイメージです.
最後に,ここまで病歴や身体所見,検査をして異常がなければ,血液検査を再検しましょう.溶血による偽性高K血症だった・・・なんてこともありますからね.

治療は原疾患の治療と血清Kを下げる治療に分けます.原疾患のコントロールをつかせることは当たり前として,血清Kを下げる治療について解説していきます.
代表的なのはGI療法です.グルコールとインスリンの頭文字を取ってGIです.グルコースは細胞内に取り込まれるときに,Kイオンとともに細胞内に取り込まれます.これを利用した治療法です.
ブドウ糖5gに対して,K1mEq/とインスリン1U必要です(5:1:1の法則).なので,50%ブドウ糖溶液40ml+速効型インスリン8Uの組み合わせが多いでしょうか.
他には,陽イオン交換樹脂であるロケルマやカリメートを使います.


・高Ca血症
最後は高Ca血症を解説します.
担癌患者では常に高Ca血症の可能性を考えて診療しましょう.内科の病棟管理では鉄則です.
一方で病歴不明な救急外来の患者さんはどうでしょうか?これもなかなか難しいです.なので少しでも拾い上げられるようにするために,こちらも疑うべき症状と病歴をまとめておきました.精神症状は倦怠感,易疲労感,易刺激性,せん妄,傾眠傾向,昏睡などが挙げられます.医師国家試験でもこれらの症状で出題されることがあるので,覚えておきましょう.

ざっと原因疾患を挙げました.病歴,身体所見などからこれらを絞り込めれば大丈夫でしょう.iPTHは測定しておきたいですね.すぐに結果が出るとは限らないので,あくまでも救急外来ではCa補正に専念して,専門科に繋げるときの材料として測定しておきましょう.

治療法は原疾患の治療は言うまでもないです.補正について解説します.まずは輸液で薄めましょう.生理食塩水で大丈夫ですよ.カルシトニン製剤を使いますが反復使用で耐性がついてしまうことは知っておきましょう.初期使用に留めておいてください.ビスホスホネート製剤は悪性腫瘍に伴う高Ca血症に適応があります.即効性は乏しいですが,持続時間が長いのが特徴です.

最後にCa代謝の病態生理図を載せておいたのでご参照ください.


みるすきー

参考文献
「内科レジデントの鉄則」
「救急外来ただいま診断中!」
「研修医のための内科診療ことはじめ 救急・病棟リファレンス」

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